2026(R8)血管肉腫について
ドキソルビシン5-6回静注したあと
その後の治療について(蓄積性心筋毒性)
血管肉腫は、悪性度と分裂性の強い血管内皮の腫瘍であります。
犬における治療の第1選択薬はドキソルビシンと呼ばれる抗癌剤であるが、
蓄積性の心臓の筋肉に対する毒性があり、3週間毎の静脈注射で回数制限があります。
しかも、血管から抗癌剤が漏れると、重篤な皮膚組織の壊死が起こり、
最悪の場合断脚も考えなければならないなど獣医師にとって、いやな抗癌剤の1つです。
それだけ苦労して投薬しても、生存期間中央値は約6ヶ月、1年生存率は
10%以下であります。
◎もともと血管の内側にある細胞の腫瘍なので肺、腹腔内リンパ節、肝臓、腸管膜、
大網、腹膜、骨、脳、皮膚など血管の存在するいたるところに転移する非常に
やっかいな悪性腫瘍です。
◎ではドキソルビシンを使用できなくなったあと何かできることはないのか、次の一手は
何もないのかということです。
私自身、現在ドキソルビシン終了後4ヶ月生存しているミニチュア・ダックスフンドを
治療しています。私は血管肉腫を攻略するポイントが大きく分けて
4つあると考えています。
第1番目 血栓を作りにくくすること
ドイツの病理学者で、歴史上有名なウィルヒョウの三徴(血栓症のリスク因子)
血管壁の異常
血流のうっ滞
血液凝固能亢進(血液どろどろ)
から考案した治療法です。
血管肉腫は、血栓症による死亡率が非常に高い悪性腫瘍です。
もともと血管壁由来の腫瘍なのであたりまえといえばあたりまえだと思います。
これに対する治療法としては、血栓および凝固亢進の予防としての内服薬や
低分子ペリンの注射薬があげられます。
血流のうっ滞、血液凝固能亢進に対しては、血液をサラサラにすれば良いので
w-3脂肪酸の内服サプリメントを使用しております。
第2番目 血管新生を抑制すること

悪性度が高くなればなるほど腫瘍自身が大きくなろうと細胞分裂を繰り返し、
より栄養やエネルギーが必要となります。
そのため腫瘍が新たに血管を作り、自身へ引っ張り込もうとします。
これに対しては、サリドマイド(内服薬)、レブリチン(注射薬)などの薬を
使用することにより血管新生を抑制することがある程度可能となりました。
第3番目 腸活(腸活による体内の免疫力Up)
腸内には無数の腸内細菌が動物と共生しており、その中で善玉菌を増やすことが
体全体に存在する免疫細胞集団の60%ー70%をかかえる腸を元気にし、
自身の免疫力Upすることにより腫瘍と戦い排除する力を持つと言われています。
その中で血管肉腫に対しては、カワラタケ(2000年以上前から使われてきた漢方薬)
の成分であるPSP(Polysaccharide peptide)に免疫調節作用および抗腫瘍
効果があり、ペンシルバニア大学で脾臓の血管肉腫摘出後、毎日与えられた犬の
生存期間が抗癌剤と同等であるとの研究結果が出ました。
米国ではすでに多くの獣医師および腫瘍専門医が血管肉腫の治療に用いています。
第4番目 非ステロイド系抗炎症薬
腎臓が悪くなければ使用できる薬であり、腫瘍細胞が分泌するプロスタグランディン
E2(PGE2)を抑えることにより腫瘍細胞周囲に起こっている炎症や局所免疫の低下、
転移の促進などを抑える効果があります。
以上、4つの治療を組み合わせることにより、まず1年生存率を延ばすことを
目標としております。
院長 東條 雅彦

















